平成中村座・小倉城公演

2023年11月1日~26日

常設の劇場ではなく、芝居小屋として非日常の空間を楽しませてくれた公演。前回(2019)に続いて、今回も夢のような時間を過ごすことができました。

昼の部、夜の部ともに地元(北九州)にちなんだお話。しかも門司(北九州市門司区)生まれの私にとって「大里=内裏(だいり)」「柳ヶ浦(やなぎがうら)」という地名が出てくるお芝居。感慨深いものがあります。

*門司駅から少し東へと進むと「柳の御所(御所神社)」があります

昼の部「義経千本桜 渡海屋の場」は、安徳天皇を密かに守ってきた平家側の平知盛(たいらのとももり)と兄・源頼朝(みなもとのよりとも)に追われる義経(よしつね)が対峙する内容。決して「皆、幸せに暮らしました」とはならない物語です。

その中で、クスッと笑えるのが「さかなづくし」の場面。詳しい解説を見つけましたので、こちらでご紹介します。

さかなづくし

『義経千本桜 渡海屋の場』では、鎌倉方と名乗る相模五郎と入江丹蔵が現れて、義経主従を追うため船を出すようにと命じますが、そこへ戻ってきた銀平(実は平知盛)に追い返されてしまいます。この時、悔し紛れに二人が言い放つ負け惜しみが「魚づくし」になっていますが、これは原作の人形浄瑠璃にはなく、歌舞伎で独自に作られたせりふです。海をイメージするこの場面と歌舞伎ならではの洒落の効いたせりふが相俟って、一服の清涼剤のように客席を和ませます。

歌舞伎公式サイト
歌舞伎美人(歌舞伎 今日のことば)
https://www.kabuki-bito.jp/special/knowledge/todaysword/post-todaysword-post-270/

台詞(せりふ)と、解説はこちらです。

『鰯(いわし)ておけば飯蛸(いいだこ)思い、鮫(さめ)ざめの鮟鱇(あんこう)雑言。いなだ鰤(ぶり)だと穴子(あなご)って、よくい鯛(たい)目刺(めざし)に鮑(あわび)たな』⇒言わしておけばいいだろと思い、様々の悪口雑言。田舎武士だとあなどって、よくも痛い目にあわせたな


『鯖(さば)浅利(あさり)ながら、鱈(たら)海鼠腸(このわた)に帰るというはに鯨(くじら)しい。せめてものはら伊勢海老(いせえび)に、このひと太刀魚(たちうお)をかまして槍烏賊(やりいか)』⇒さはさりながら、ただこのままに帰るというは憎たらしい。せめてもの腹いせに、このひと太刀をかましてやろうか

歌舞伎公式サイト
歌舞伎美人(歌舞伎 今日のことば)
https://www.kabuki-bito.jp/special/knowledge/todaysword/post-todaysword-post-270/

張り詰めた場面のなかで、力を抜いて洒落を愉しむ場面。日本語ならではの面白さだと感じます。

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